さつまトラベル

鹿児島の味わい:南日本の風味を巡る旅

九州最南端に位置する鹿児島県は、雄大な火山、亜熱帯の自然美、そして深く根付いた食文化を誇る土地です。肥沃な火山灰土、清らかな海、温暖な気候といった豊かな自然に恵まれ、他にはない独自の食文化が育まれてきました。ここでは、ひと皿ひと皿に地域の歴史、風土、そして心のこもったおもてなしの物語が込められています。

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黒豚(鹿児島バークシャー種)

鹿児島の名産「黒豚(バークシャー種)」は、一般的な品種よりも体重が20~30%ほど軽い、黒い蹄を持つ豚から生まれます。さつまいも、穀物、ドングリなど栄養価の高い飼料と、火山灰を使った清潔な寝床で飼育され、最大270日間ストレスの少ない放牧環境で育ちます。その結果、旨味成分であるアミノ酸が豊富に含まれ、甘くジューシーで脂も軽く、くどさのない味わいになります。

人気の料理には、竹炭と黒ごまで衣付けした「黒カツ」、しゃぶしゃぶ、そして地元の米味噌・にんにく・醤油・かぼすで漬け込んだ味噌漬け焼きがあります。和食店「Juan 荒田店」などでは、かまどで炊いた地元産「伊佐米」とともに提供され、黒豚の旨味がより一層引き立てられます。

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さつま揚げ(魚のすり身揚げ)

江戸時代、島津藩の支配下にあった頃に誕生したとされるさつま揚げは、琉球の「チキアギ」に着想を得て、豊富な沿岸魚(イワシ、サバ、トビウオなど)を保存する手段として発展しました。

魚のすり身に、豆腐、卵、片栗粉、砂糖、酒、塩、そしてごぼう、れんこん、しそなどの野菜を加えて混ぜ合わせ、黄金色になるまで揚げたものです。そのままでも、煮物に入れても、炙って醤油と生姜、あるいはからしをつけて食べても美味しくいただけます。

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きびなご(銀色の小魚)

鹿児島近海で獲れる細く銀色に輝くきびなごは、新鮮なまま刺身として提供されることが多く、美しく扇状に盛り付けられ、酢味噌やポン酢とともに味わいます。また、軽く炙っても美味しく、繊細な味わいの中に鹿児島の海の恵みが感じられます。この小さな魚は、まさに鹿児島ならではの海の宝物です。

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鶏飯(けいはん・奄美の郷土料理)

奄美大島発祥の伝統料理「鶏飯(けいはん)」は、少なくとも江戸時代から存在し、かつては島津家のもてなし料理として客人に振る舞われていました。

蒸し鶏のほぐし身、錦糸卵、パパイヤの漬物(パパイヤ味)、干し椎茸、柑橘の皮、海苔、時には酒蒸し椎茸やみかんの皮などを白ご飯の上にのせ、上から熱々の鶏だしをかけていただきます。その食べ方は、お茶漬けを思わせるような味と食感の融合で、現代ではこの出汁をかけるスタイルが主流となっています。

学校給食や家庭料理にも登場するこの料理は、奄美の「心の味」として親しまれています。

薩摩(芋)焼酎

鹿児島県は芋焼酎の生産量で日本一を誇り、県内生産の約70%、全国シェアの約40%を占めています。

代表的な「黄金千貫」や華やかな香りの「ジョイホワイト」、紫色が特徴の「アヤムラサキ」など地元産のさつまいもを原料に、地元の米麹と清らかな地下水で仕込まれる芋焼酎は、まろやかで香り高く、芳醇な味わいが特徴です。

ストレート、ロック、お湯割り、水割りなどさまざまな飲み方があり、黒じょかと呼ばれる陶器で温めたり、祝席では繊細な薩摩切子のグラスに注がれて提供されることもあります。

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鶏刺し(鶏の刺身)

新鮮な鶏肉を生または軽く炙った状態で提供する大胆な逸品「鶏刺し」。醤油におろし生姜やにんにく、またはにんにくチップなどを添えて味わいます。
鹿児島は厳格な衛生管理と高品質な鶏肉の供給で知られ、この特別な料理が安心して楽しめる地域です。ただし、安全に楽しむためには、信頼できる許可を得た飲食店でのみ味わうことが推奨されます。

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軽羹(かるかん)

軽羹(漢字:軽羹)は、17世紀末から18世紀初頭の薩摩藩で誕生した伝統的な蒸し菓子です。山芋と島ザラメを原料に、当時は貴族や武士階級だけが口にできた高級和菓子でした。

軽羹粉(米粉)、砂糖、すりおろした自然薯を使って蒸し上げることで、ふんわり軽やかな食感の「蒸しようかん」に仕上がります。現在では、中に餡を入れた「軽羹饅頭」も定番で、結婚式や法事などの行事菓子として、また鹿児島を代表するお土産として親しまれています。

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鹿児島ラーメン

鹿児島ラーメンは、地元で愛される独自のスタイルを持つラーメンです。福岡の濃厚なとんこつラーメンとは異なり、鹿児島ラーメンは豚骨をベースに鶏や野菜、乾燥魚を加えたあっさりながらもまろやかな旨みが特徴です。

麺は太く縮れており、しっかりとした食感が楽しめます。トッピングには黒豚チャーシュー、揚げニンニク、ネギがよく使われます。店舗ごとに黒ニンニク油や漬物、焦がし玉ねぎなどの工夫があり、鹿児島市の天文館ラーメン横丁で味わうのが一番です。この一杯は、鹿児島の食文化の温かさと奥深さを象徴しています。

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